透析患者の血糖管理は「敗戦処理」にあらず
CGMが変えるかつての常識
研究の背景:透析期患者の血糖管理は緩くなってしまっていた
日本糖尿病学会の『糖尿病治療ガイド』に長らく記載されてきた糖尿病治療の意義とは、①血糖・血圧・脂質・体重の管理と禁煙指導→②大血管障害・細小血管障害の予防→③健常者と変わらないQOLと寿命の確保―である。最近では、そこに寝たきり予防やがん予防やスティグマ対策も加わっているが、上記の①→②→③の流れが糖尿病治療意義の王道であることには変わりはない。
そして、糖尿病患者教育の中では、「こんな状況ではいずれ失明してしまいますよ」とか、「このままでは透析まっしぐらです」といった脅し文句が使われがちである。かく言う私自身もそうした言葉を発してきた人間である。よって、私たち糖尿病専門医は、透析導入のことを「自分の糖尿病治療の敗北」を意味するように感じがちで、透析患者の血糖管理はいわば「敗戦処理」の側面がある。透析期にある糖尿病患者の血圧を含めた全身管理についてはどうしても透析専門医に任せがちとなり、透析前の糖尿病患者に比べて透析期の糖尿病患者では血糖管理が緩くなりがちな気がする。
そもそも腎不全期・透析期の糖尿病患者では、腎性貧血の影響でHbA1cが長期の血糖管理指標として信用し難く、グリコアルブミン(GA)は一定程度の有用性はあるが直近2週間程度の血糖管理指標にすぎない。血糖管理を厳格にしようにも、頼りになる長期の指標がないという状況でもある。言い訳かもしれないが、どうしても透析期患者の血糖管理は緩くなってしまっていたのである(全ての糖尿病専門医がそうであるかは不明だが、少なくとも私はそうである)。
そんな中、透析期糖尿病患者の死亡リスクが持続グルコースモニタリング(CGM)実施の有無で異なるというデータが米国糖尿病学会(ADA)の機関誌に掲載された(Diabetes Care 2026; 49: 1285-1293)。透析患者での血糖管理の把握にCGMが有用であることと、透析患者においても血糖管理が死亡リスクにまで影響を及ぼすことを示唆するデータであると考え、ご紹介したい。
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山田 悟(やまだ さとる)
1994年、慶應義塾大学医学部を卒業し、同大学内科学教室に入局。東京都済生会中央病院などの勤務を経て、2002年から北里研究所病院で勤務。 現在、同院糖尿病センター長。診療に従事する傍ら、2型糖尿病についての臨床研究や1型糖尿病の動物実験を進める。日本糖尿病学会の糖尿病専門医および指導医
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