ドクターズアイ 倉原優(呼吸器)

咳失神、どのくらいの人が経験している?

有病率や危険因子など実態が明らかに

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背景:深刻な二次被害の恐れ、疫学は不明

 咳嗽性失神(cough syncope)とは、激しい咳嗽発作を引き金に生じる、ごく短時間の意識消失である。1876年にCharcotが喉頭性めまい(laryngeal vertigo)として記載したのが最初とされる。現在は、排尿失神などと並ぶ状況失神の1つに位置付けられている。 機序は古典的である。咳き込むと胸腔内圧が急激に上がる。すると静脈還流が減り、心拍出量が落ち、脳灌流が保てなくなる。圧受容体を介した反射の関与も指摘されている。 この病態が厄介なのは、意識消失そのものより、その先にある二次被害である。転倒による外傷はもちろん、運転中に咳き込んで失神すれば交通事故に直結する。発作は突然で、予測がつかない。確立した予防法もない。

 そして、肝心の疫学がよく分かっていない。これまでの知見は、症例報告と後ろ向き研究にほぼ限られる。このたび、咳嗽性失神の有病率や危険因子などの実態を明らかにしたデータが報告されたので紹介したい(ERJ Open Res 2026; 12: 01779-2025)。

倉原 優(くらはら ゆう)

国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科

2006年、滋賀医科大学卒業。洛和会音羽病院での初期研修を修了後、2008年から現職。日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本感染症学会感染症専門医、インフェクションコントロールドクター、音楽療法士。自身のブログで論文の和訳やエッセイを執筆(ブログ「呼吸器内科医」)。著書に『呼吸器の薬の考え方、使い方』、『COPDの教科書』、『気管支喘息バイブル』、『ねころんで読める呼吸』シリーズ、『本当にあった医学論文』シリーズ、『ポケット呼吸器診療』(毎年改訂)など。

倉原優
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