ドクターズアイ 佐々木香る(眼科)

「ADC眼毒性管理」で高まる眼科医の役割

米国角膜屈折外科学会角膜委員会のレビュー

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研究の背景:標準管理を求める米国眼科学会

 抗体薬物複合体(ADC)は、強力な細胞傷害性薬剤を腫瘍細胞に直接送達するためにデザインされたがん治療薬の一種である。腫瘍細胞に発現している蛋白を特異的に認識するモノクローナル抗体と、細胞傷害性薬剤であるペイロード、そしてこの2つをつなぐリンカーから構成される(図1)。

図1.ADCの構造イメージ

 ペイロードは、血中循環での安定性と効率的な細胞内薬物放出を両立するように化学設計されたリンカーを介して抗体に結合している。つまり、これら3つの構成因子はそれぞれ「標的認識」「治療効果」「薬物動態」を担い、腫瘍細胞を死滅させる。

 2000年に米国で初のADCとしてゲムツズマブオゾガマイシンが承認されて以来、この分野は急速な発展を遂げている。国内でも多数のADCが承認・使用されており、さらに適応拡大や新規開発が進んでいる。

 しかし、ADCの投与に伴い種々の眼表面副作用が生じることが報告されており、適切な管理体制の構築が早急に求められている。

 これまでADCによる眼副作用については、抗体とペイロードの組み合わせにより多様な眼毒性が生じることが断片的に報告されるにとどまっていた。こうした課題に対し、2025年に米国眼科学会(AAO)は、標準化された管理プロトコルの確立が極めて重要であるとする声明を発表した(Antibody-Drug Conjugates and Ocular Toxicities: A Call for Standardized Guidelines - 2025)。

 今回紹介するのは、この声明を受けて米国角膜屈折外科学会(ASCRS)の角膜委員会が眼表面の専門家を招集して緊急にまとめた、ADCの眼表面副作用に関するレビュー論文である(Cornea 2026; 45: 1339-1350)。

佐々木 香る(ささき かおる)

関西医科大学眼科学教室病院教授

1986年、大阪市立大学(現大阪公立大学)医学部卒業後、大阪大学医学部眼科学教室に入局。1994年、大阪大学大学院医学研究科博士課程修了(医学博士)。その後、九州の眼科専門施設に勤務し、主に角膜疾患の外科的治療や眼感染症疾患の臨床に携わる。2012年に帰阪し、地域医療機能推進機構(JCHO)星ヶ丘医療センター眼科部長を経て、2018年より関西医科大学に勤務。2023年より現職。角膜センター長併任。学術面では、2017年に第54回日本眼感染症学会総会長を務め、近年はAMR臨床リファレンスセンターでの講演などを通じ、眼科領域における抗菌薬適正使用の推進と啓発活動にも取り組んでいる。専門領域を通じて築いた多くの先生方との絆を礎に、日々の臨床と研究に真摯に取り組んでいる。

佐々木香る
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