ドクターズアイ 山田悟(糖尿病)

ケトン体に新時代、「味方」にするための指針

日本でも持続モニタリングが導入されたら

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする

研究の背景:進むケトン体見直し、有害物質と決めつける論調は完全に消えた

 今年(2026年)8月25日、米食品医薬品局(FDA)が持続ケトン体モニタリング機器を承認した(Abbott LibreDuo:Duoというのは1枚のセンサーで血糖とケトン体の2つの物質を同時にモニタリングできることに由来する名称である)。正確にはβヒドロキシ酪酸のモニタリング機器であるが、名称は持続ケトン体モニタリング機器(continuous ketone monitoring)とされている※。

 私は、以前に「ケトン体は味方だった!」というタイトルで、米国心臓病学会の機関誌にケトン体の心血管疾患に対する有益性についての論文(J Am Coll Cardiol 2021; 77: 1660-1669)が掲載されたことをご紹介した。長らくわれわれ糖尿病専門医に敵愾心を抱かれてきたケトン体であるが、ここ数年、少なくともケトン体を一方的に有害物質であるとする論調は完全に消え、「敵か、味方か?」というタイトルの論文が2023年(Nutrients 2023; 15: 4383)、2024年(Front Endocrinol 2024; 15: 1400206)と連続して出ているくらいである〔読んでいただくとわかるが、特に前者はケトン体(ケトン食やケトン体サプリメント)の治療意義を論説しているので、内容としては「ケトン体は味方だった!」に近い〕。

 そんな中、その最もケトン体に敵愾心を抱いてきた糖尿病専門医が診療している2型糖尿病患者において、生理学的なケトン体濃度の範疇なら、血中ケトン体濃度が高い集団の方が心腎合併症の発症が少なかったことを示す前向きコホート試験の結果が発表された(Diabetes Res Clin Pract 2026; 239: 113476)。持続ケトン体モニタリング時代の象徴となる論文であると考え、ご紹介したい。

※ケトン体は、βヒドロキシ酪酸+アセト酢酸+アセトンの総称である。このうちアセトンは呼気に呼出されるため、血中濃度として測定する際には、βヒドロキシ酪酸+アセト酢酸=総ケトン体となる。アセトンはアセト酢酸から自発的に生成され、アセト酢酸とβヒドロキシ酪酸とのモル比はNAD+とNADHのバランスにより決定される。通常では1:1に近いが、脱水や糖質制限中ではβヒドロキシ酪酸優位となり(1:2~3程度)、ケトアシドーシスにおいてはさらにβヒドロキシ酪酸優位となることが知られている。正常値としては、総ケトン体120~130μmol/L以下、アセト酢酸55~68μmol/L以下、βヒドロキシ酪酸74~85μmol/L以下程度の数値が検査会社ごとに設定されている。なお、本稿においては、ケトン体の濃度をμmol/Lで表現することを原則とするが、「私の考察」において一部、国際コンセンサス(Diabetes Care 2024; 47: 1257-1275)の表現に準じてmmol/Lで示しているところがある。この場合には数値はどんなに高くても10未満で判別は容易とは思うが、もし、分かりにくいようであればお詫びしたい。


山田 悟(やまだ さとる)

1994年、慶應義塾大学医学部を卒業し、同大学内科学教室に入局。東京都済生会中央病院などの勤務を経て、2002年から北里研究所病院で勤務。 現在、同院糖尿病センター長。診療に従事する傍ら、2型糖尿病についての臨床研究や1型糖尿病の動物実験を進める。日本糖尿病学会の糖尿病専門医および指導医

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする