ドクターズアイ 柳靖雄(眼科)

抗VEGF療法でも止まらない萎縮に打つ手は?

nAMD眼へのペグセタコプラン併用1年成績

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研究の背景:承認試験の対象外だった既存nAMD眼

 抗血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor;VEGF)療法は、新生血管型加齢黄斑変性(neovascular age-related macular degeneration;nAMD)の標準治療である。滲出を抑え、中心視力を守ることが第一の目標だが、抗VEGF療法を続けても、網膜色素上皮(retinal pigment epithelium;RPE)と視細胞の萎縮は広がる。

 以前、本連載で地図状萎縮(geographic atrophy;GA)と黄斑新生血管(macular neovascularization;MNV)の関係を取り上げた(関連記事「新生血管は悪じゃない?地図状萎縮に保護的作用」)。対象は非新生血管型のGA眼にType1 MNVが新たに生じた症例だった。Type1 MNVは外層網膜とRPEへの血流を補い、萎縮の拡大を遅らせうる。

 nAMDに伴う萎縮について、本稿ではGAと区別して黄斑萎縮(macular atrophy;MA)と呼ぶ。CATT試験の5年成績では、抗VEGF療法を受けたnAMD眼の相当数にMAが認められ、長期の視力予後を規定した(Ophthalmology 2016; 123: 1751-1761)。

 非新生血管型のGAには、補体経路を標的とする硝子体内注射がある。C3阻害薬ペグセタコプラン(国内での適応は発作性夜間ヘモグロビン尿症、C3腎症、一次性免疫複合体型膜性増殖性糸球体腎炎)はOAKS試験およびDERBY試験で(Lancet 2023; 402: 1434-1448)、C5阻害薬アバシンカプタド ペゴルはGATHER1試験(Ophthalmology 2021; 128: 576-586)およびGATHER2試験(Lancet 2023; 402: 1449-1458)でGA拡大の抑制を示した。これらの試験は、既存のMNVがある患者を除外している。既存nAMD眼のMAに対する補体阻害薬の追加は、承認試験の対象外である。米国のMedicare Advantage集団では、GA患者の25.6~28.0%に滲出型AMDの併存が報告されている(J Manag Care Spec Pharm 2025; 31: 88-94)。

 日本におけるGAの治療薬として、ペグセタコプラン(米国商品名Syfovre)は2026年10月時点で未承認であり、使用可能な補体阻害薬はアバシンカプタド ペゴル(商品名アイザベイ硝子体内注射液20mg/mL)のみである。効能・効果は「萎縮型AMDにおけるGAの進行抑制」であり、既存nAMDを合併した眼への使用は適応外である。

 今回紹介するのは、抗VEGF療法中の既存nAMDと非中心窩下MAを併存する眼を対象に、ペグセタコプランを追加投与した米国単施設の後ろ向き研究である(Retina 2026; 46: 1695-1702)。

柳 靖雄(やなぎ やすお)

医療法人社団祥正会お花茶屋眼科手術外来院長、横浜市立大学視覚再生外科学客員教授、デューク・シンガポール国立大学医学部Adjunct Professor

東京大学医学部を卒業(1995年、MD)し、同大学大学院で医学博士号を取得(2001年、PhD)。基礎医学に強固な学術的バックグラウンドを持ち、200本以上の科学論文を執筆、国内外で10以上の賞を受賞。東京大学医学部眼科学教室講師(2012~15年)、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授(2016~20年)、旭川医科大学眼科学教室教授(2018~20年)を歴任し、現在は横浜市立大学視覚再生外科学客員教授(2020年~)およびデューク・シンガポール国立大学医学部Adjunct Professor(2020年~)として国際共同研究に積極的に関与している。専門は黄斑疾患で、新規治療薬に関する特許を多数出願。スタンフォード大学とエルゼビア社が2024年に発表した「世界のトップ2%の科学者リスト」に選出された。DeepEyeVisionの取締役としてAI技術の開発に携わり、国際誌「TVST」や「Scientific Reports」の編集者としても日本のプレゼンス向上に貢献。都内のクリニックでは質の高い診療を提供し、地域医療にも尽力。現在、医療経済研究、創薬、国際共同臨床研究など多岐にわたる分野で積極的に活動している。

柳 靖雄
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