メニューを開く 検索

トップ »  医療ニュース »  2023年 »  循環器 »  新規siRNA薬の長期有効性を確認

新規siRNA薬の長期有効性を確認

ORION-3試験

2023年01月19日 18:10

543名の医師が参考になったと回答 

イメージ画像

 英・Imperial College LondonのKausik K. Ray氏らが、新機序のLDLコレステロール(LDL-C)低下作用を有する低分子干渉RNA(siRNA)医薬品inclisiranの有効性を検討したORION-1の延長試験であるORION-3の結果をLancet Dibetes Endocrinol2023年1月5日オンライン版)に発表。「inclisiranの年2回投与は、4年間の長期試験においてもLDL-C低下作用を維持した」と述べた。

ORION-1試験の薬剤投与群をinclisiran単独群として継続

 Inclisiranは、肝におけるPCSK9の産生を抑制することでLDL-C低下作用を発揮する低分子干渉RNA(siRNA)医薬品である。複数の用量設定でinclisiranを1回または2回投与したプラセボ対照第Ⅱ相試験のORION-1試験では、プラセボ群に対し、inclisiran 1回投与群で27.9~41.9%、2回投与群で35.5~52.6%、LDL-Cを有意に低下させることが確認された(N Engl J Med 2017; 376:1430-1440)。また、1年後の安全性データも報告されている(関連記事「新機序LDL-C低下薬、1年後も安全性確認」)。

 ORION-3はORION-1を完遂した患者を対象とした非盲検延長試験であり、ORION-1でinclisiranを投与された患者は用量、回数にかかわらず同薬300mgを年2回皮下注投与(inclisiran単独群)、ORION-1でプラセボ群に割り付けられた患者には、day360までエボロクマブ140mgを隔週で皮下投与し、その後は試験終了までinclisiran 300mgを年2回投与した(スイッチ群)。

 主要評価項目は、inclisiran単独群におけるORION-1の開始時点からORION-3のday 210までのLDL-C低下率(両試験を合わせたinclisiran累積曝露期間は約570日)。副次評価項目と探索的評価項目は、day 1,440(4年間)までのLDL-C値とPCSK9濃度の低下率とした。

Day 210でLDL-Cは47.5%低下

 ORION-1でinclisiranを投与された370例中290例がinclisiran単独群、プラセボ群に割り付けられた127例中92例がスイッチ群としてORION-3に参加することに同意。inclisiran単独群のうち233例(80%)、スイッチ群のうち80例(87%)が4年間の追跡期間を終了した。

 試験の結果、day 210時点でinclisiran単独群のLDL-Cは1.56mmol/L(60.3mg/dL)低下しており(95%CI -1.68~-1.44mmol/L)、低下率は47.5%だった(同-50.7~-44.3%、P<0.001)。

 inclisiran単独群では4年間でinclisiran 300mgを9回投与したが、この期間のLDL-Cの時間平均(time-averaged)低下率は44.2%(95%CI 47.1~41.4%)、PCSK9濃度の低下範囲は62.2~77.8%だった。

 注射部位の有害事象発生率はinclisiran単独群で14%(284例中39例)、スイッチ群で14%(87例中12例)だった。また、試験薬との関連が否定できない重篤なイベント発生率はそれぞれ1%(3例)、1%(1例)だった。

結果の解釈には試験デザインの理解が必要

 考察でRay氏らは「長期作用を有するinclisiranの特徴から不可避ではあったが、今回の長期試験のデザインには注意すべき微妙な点が幾つかある」と述べ、その1つとしてベースラインの設定の困難さを挙げている。

 非盲検であるORION-3の開始時点でinclisiran単独群の患者は、inclisiranを既に1~2回投与されており、ORION-1の終了時点でLDL-Cは少なくとも20%低下していた。ORION-3の主要評価項目が、inclisiran単独群におけるORION-1開始時点のLDL-Cと比べたday 210でのLDL-C低下率とされたのはこのためである。 

 さらに同氏は「非盲検の延長試験でプラセボ群の設定がなかったことから、プラセボによる補正が行われなかった」と指摘。inclisiranの3件の第Ⅲ相試験(ORION-9、ORION-10、ORION-11)の統合解析(J Am Cardiol 2021; 77: 1182-1193)では平均50.5%のLDL-C低下が報告されたが、同解析ではプラセボによる補正がなされていたことから「47.5%という今回の結果は、「有効性の低減を示しているわけではない」と記している。

 最後にRay氏らは「ORION-3は年2回のinclisiranを反復投与し、前向きに観察した初めての長期試験であり、inclisiranの安全性と有効性を確認する結果となった」と結論している。

木本 治

無料でいますぐ会員登録を行う

【医師限定】

初回登録で500円分のポイントをもれなく進呈!

(4月末迄/過去ご登録のある方を除く)

  • ・ ご利用無料、14.5万人の医師が利用
  • ・ 医学・医療の最新ニュースを毎日お届け
  • ・ ギフト券に交換可能なポイントプログラム
  • ・ 独自の特集・連載、学会レポートなど充実のコンテンツ

ワンクリックアンケート

大阪万博まであと1年

トップ »  医療ニュース »  2023年 »  循環器 »  新規siRNA薬の長期有効性を確認