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問診票のみで頭痛を診断するAIモデル開発

非頭痛専門医による診断精度が2倍に向上

2023年02月08日 05:00

457名の医師が参考になったと回答 

イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 日本における片頭痛の有病率は4.3~8.4%に上り、日常生活や仕事のパフォーマンスなどに深刻な影響を及ぼしている。しかし、患者の多くは非頭痛専門医による診断・治療を受けているのが実情である。糸魚川総合病院(新潟県)脳神経外科医長の勝木将人氏、富永病院(大阪市)脳神経内科副部長の菊井祥二氏らの研究グループは、匿名化された頭痛患者4,000例のデータを用いて、頭痛問診票の17項目の情報から片頭痛、緊張型頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛、その他の一次性頭痛、脳血管障害などによる二次性頭痛を診断できる人工知能(AI)モデルを開発。このAIモデルを用いることで非頭痛専門医の頭痛診断精度が46%から83%まで向上したとCephalalgiaに発表した(関連記事「薬物乱用頭痛、有病率の国内初報告」「『ハイブリッド治療』で頭痛を改善」)。

正確な診断と医師の負担軽減を目的に開発

 日本における片頭痛患者の29.8~74.2%は日常生活になんらかの支障を来しているとされる(Neurol Ther 2022; 11: 205-222)。また、総人口の10~20%が緊張型頭痛を有し、うち22.4~29.2%が仕事などのパフォーマンスに影響が及んでいるとの報告もある(Intern Med 2014; 53: 683-689)。片頭痛と緊張型頭痛や三叉神経・自律神経性頭痛は治療法が異なるため、正確に診断して頭痛専門医や脳神経内科医・外科医による専門的治療介入を行う必要がある。

 しかし、1,000万例超の片頭痛患者に対し頭痛専門医はわずか949人しかおらず、患者の多くは非専門医によって診断・治療されている。頭痛の正確な診断には長時間の問診が欠かせないが、医師にとって負担が大きく十分な時間が確保できない、頭痛に対する知識の不足などが原因で診断の遅れや誤診につながるケースは少なくない。近年、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)関連抗体薬の登場により片頭痛発作の多くが予防できるようになった一方で、正確に診断されず鎮痛薬やトリプタン系薬の過剰使用により薬物乱用頭痛を来し、難治化する例も散見される。

 そこで、研究グループは頭痛診療に携わる医師の負担を軽減し、正しい頭痛の診断をサポートすることを目的に、問診票の入力のみで頭痛が診断できるAIモデルの開発に着手した。

片頭痛と三叉神経・自律神経性頭痛の診断精度は100%

 研究グループは、2013年3月~21年12月に富永病院頭痛センターを受診した15歳以上の初診患者4,000例の匿名化された問診票データを用いて、17項目の変数(年齢、性、身長、体重、頭痛の発症年齢、頻度、持続時間、部位、特徴、重症度、運動による悪化の有無、随伴症状、前兆の有無、最も起こりやすい時期、誘発因子、急性期治療薬の使用、家族歴)を抽出。同センターの頭痛専門医4人が診察・検査・ディスカッションを行い、データを国際頭痛分類第3版(ICHD-3)に基づく診断名①片頭痛および薬物乱用頭痛、②緊張型頭痛、③三叉神経・自立神経性頭痛、④その他の一次性頭痛、⑤脳血管障害などによる二次性頭痛-の5つに分類した。

 フェーズ1として、4,000例をトレーニングデータ(2,800例)とテストデータ(1,200例)に7:3でランダムに割り付け、トレーニングデータを用いて問診票の17項目の変数に基づき5つの診断名を予測するモデルを構築。テストデータで精度を検証した。その結果、全体の正解率は76%、感度は56%、特異度は92%で、特に片頭痛および薬物乱用頭痛はそれぞれ91%、91%、80%(受信者動作特性解析の曲線下面積0.94)、三叉神経・自立神経性頭痛では84%、84%、87%(同0.99)と高い精度を示した。

 次にフェーズ2として、4,000例とは別の同センター初診患者連続50例の匿名化データを用いて、非専門医におけるAIモデルの有効性を検証した。まず、非専門医5人にAIモデルを用いず問診票のみを基に50例を診断してもらったところ、専門医の診断を正解とする診断精度は46%だった。一方、AIモデルを用いると診断精度は83%に向上し、非専門医間での診断一致率も改善した。特に専門的治療が必要な片頭痛と三叉神経・自律神経性頭痛の診断精度は100%だった。

 以上を踏まえ、研究グループは「今回開発したAIモデルは、問診票の17項目だけで5種類の頭痛を高精度に診断できることが示された。放射線学的検査や血液検査などの必要がないため、オンライン診療やスマートフォンアプリなどに組み込むことで頭痛の正確な診断に寄与する可能性がある。さらに頭痛患者の問診にかかる時間の削減、医師の負担軽減、専門医の治療が必要な片頭痛や三叉神経・自律神経性頭痛の見落とし防止、プライマリケア医と専門的頭痛治療センターとの連携促進につながる可能がある」と結論している。

(小野寺尊允)

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