海岸に薬袋を残して亡くなった患者さん
薬剤師必見!残薬管理この一手! Life happy well 福井繁雄
LIFE HAPPY WELL
福井 繁雄
19歳のある日、「薬飲んだら頭痛くなるんよ」という祖母の一言をきっかけに、残薬について考えるようになった僕。それから薬剤師になり、残薬解消のための活動を始めた。
このコラムでは、薬局薬剤師の僕が在宅や薬局での業務の中で行った、残薬に関する取り組みを紹介する。僕の奮闘記が全国の薬剤師の励みになるだろうかーー。
前回紹介した、「青いシートの薬がない!」と言っていた患者さん。透析患者さんで、視力が弱っているために、似た形状の薬が判別できずにいた。それから、この方の残薬管理をするようになり、「他の透析患者さんは、どうなのだろう」と考えるようになった。
透析患者さんが生きていくには、透析を受けなければならない。しかし、そのことを受け入れられずに亡くなってしまう方がいるーー。そんなことを知るきっかけとなった、ある経験を話そう。
この記事のポイント
- 透析患者さんが、薬の入った薬袋を残して自殺した
- 服薬指導も残薬確認もしていたが、本当に飲み続けていられたかはわからない
- 患者さんが服薬を続けられるような精神的サポートが必要だ
残薬が出るということは飲んでいないということ
ある日、薬局に警察から電話がかかってきた。「行方不明の方の名前が書かれた薬袋が海辺に落ちていた。その薬袋はオタクの薬局のもの」――中に入った薬には、全く手をつけられないままだったという。
薬袋に記載された名前に、見覚えがあった。当時50歳くらいの、ある百貨店のお偉いさんだった。ご家族の陰はあまり見えなかった。待つのが嫌いでいつもイライラしていて、怖い印象があった。投薬時にはいつも、「早く死にたい」と言っていたのを覚えている。
残薬チェックは当然しっかりと行っていた。特にリンの値を下げる沈降炭酸カルシウムは、食事に合わせて減量してもらうなど、必要量のコントロールも行っていた。しかし、実際のところ薬をきちんと飲んでいたのかは分からない。ほとんど飲まずに、透析のおかげでなんとか生きていたのかもしれない。透析の導入からは長い月日がたっていた。ただ、ある日を境に透析も受けなくなったようだ。
そして、死亡した。
警察からの電話を受けた後日、亡くなったと教えてくれたのは病院だ。海へ身投げしていた、自殺だったという。
外来で薬を渡す時間がいかに重要なのかを痛感した。薬剤師は、患者さんからさまざまな情報を聞き取る。コンプライアンス、ポリファーマシー、残薬、効果、副作用...。患者さんが薬剤師へ言いたそうなことがあれば、傾聴する。しかし、情報のインプットばかりでよいのだろうか?薬剤師は、手に入れた情報に応えるためのアウトプット、つまり何らかの行動をしていかなければならない。
残薬が出るということは飲んでいないということ。薬を飲まなければ死に直結することもある。透析患者さんのように闘病の終わりがない方でも、病気を受け入れ、薬を飲み続けていけるよう、薬剤師ができる支援はないだろうか。
この透析患者さんは、精神的なケアも必要だった。一見強そうな方が、支えを必要としていることもある。服薬の状況から、自暴自棄になっていないかといった患者さんの精神状況を薬剤師は観察できるだろう。治療を受け入れているかどうかは、雑談の中でふとこぼす「眠剤以外捨てるんや」「友達にあげるんや」といった発言から見つけることもあるんだ。

【福井繁雄氏プロフィール】
薬学部卒業後、透析、CKD、ガン専門の薬局に13年勤務し、現在は在宅医療に関わっている。学生時代から行ってきた家族(特に祖母)のお薬管理を通じて、残薬管理に疑問を持ったことが、在宅医療に関わるようになった理由。これまでの経験を他の薬剤師にも生かしてもらいたいと、全国での研修会を月一回、行っている。自身は、生後3週間でアトピー性皮膚炎を発症し、リバウンドも経験。アトピー罹患者としての講演も行っている。
【研修会】
日本薬剤師研修センター認定の研修を月1回開催しています。
開催スケジュール:日本薬剤師研修センター受講シール2単位取得研修会(LIFE HAPPY WELL)
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