ドクターズアイ 鈴木重明(脳神経内科)

リピート病、非コード領域が毒性蛋白質を生んでいた

眼咽頭遠位型ミオパチーの原因遺伝子解析

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研究の背景:noncoding regionの意義や疾患との関連は不明

 ヒトゲノムの約99%は、蛋白質の設計図にならない「非コード領域(noncoding region)」で占められている。この領域は長らく"沈黙した配列"と見なされ、生物学的意義は限定的と考えられてきた。しかし、2〜6塩基から成る短い繰り返し配列(リピート)の異常伸長が60以上の疾患の原因となることが知られており、これらは総称して「リピート病」と呼ばれている。これらのリピートの多くはnoncoding regionに存在する。そのため、翻訳されないはずの領域の異常が、なぜ神経や筋の変性という深刻な病態を引き起こすのかという根源的な問いは、長らく未解決のままであった。

 今回、焦点を当てるのは眼瞼下垂、嚥下障害、四肢筋力低下などを呈する希少疾患「眼咽頭遠位型ミオパチー(OPDM)」である。OPDMでは、GGCという3塩基配列の異常伸長が発症と関連することが知られていたが、その変異はnoncoding regionに位置しており、病態との因果関係は不明であった

 従来は、異常伸長したRNA自体の毒性が仮説として提示されてきたものの、決定的な証拠は乏しく、患者組織に見られる特徴的な蛋白質封入体の正体も不明。すなわち、OPDMの本質的な発症機序は未解明のままであった。

 そうした中、今回紹介する論文(Nat Genet 2026; 58: 517-529)で「noncoding region」が毒性蛋白質を生むという発見が提示された。

【監修】鈴木 重明(すずき しげあき)

東京都立神経病院脳神経内科、副院長

1968年東京生まれ。慶應義塾高校から慶應義塾大学医学部に進学し、1993年卒業。ニューヨーク医科大学留学、慶應義塾大学准教授(内科学・神経)を経て、2025年4月より現職。重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン(日本神経学会)、がん免疫療法ガイドライン(日本臨床腫瘍学会)、スタチン不耐に関する診療指針(日本動脈硬化学会)の作成メンバー。都立神経病院では自己免疫ラボを立ち上げ、重症筋無力症、炎症性筋疾患、免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象など自己免疫疾患の臨床研究を展開中。

鈴木重明

【執筆】長岡 詩子(ながおか うたこ)

東京都立神経病院脳神経内科

山形大学第三内科で内科研修を行いながら、脊髄小脳変性症のフィールドワークに従事し、山形大学大学院医学専門課程を修了(医学博士)。その後、東京医科歯科大学(現・東京科学大学)で脊髄小脳変性症31型の遺伝子座を同定し、疾患の分子基盤解明に貢献した。理化学研究所ではポリグルタミンとp62の関連研究に従事。2006年より東京都立神経病院に勤務し、多系統萎縮症とレプチン、筋萎縮性側索硬化症とグレリンの関連を解析するなど、神経変性疾患の病態研究を推進してきた。現在は臨床遺伝専門医として遺伝診療体制の構築・運営を担うとともに、認知症専門医として抗アミロイドβ抗体療法の導入を推進。また、都立病院臨床特別研究として神経変性疾患の炎症バイオマーカー解析を主導している。日本神経学会専門医・指導医、臨床遺伝専門医、日本認知症学会専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医。

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