ドクターズアイ 鈴木重明(脳神経内科)

鑑別が難しい進行性核上性麻痺、MRIで見分ける新手法

新指標DMPIの有用性を検証

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研究の背景:既存の指標は定量化が煩雑かつ臨床亜型の検討が不十分

 進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy;PSP)は、パーキンソン症候群の代表的な疾患である。国内の有病率は人口10万人当たり10~20人程度で、難病法に基づく医療受給者証保持者数は2019年度調査において約1万2,000人であった。パーキンソニズムの他、易転倒性、垂直性核上性注視麻痺、認知機能障害などを特徴とし、典型的なPSPは報告者の名前を冠してPSP-Richardson syndrome(PSP-RS)またはSteele-Richardson-Olszewski syndromeとも呼ばれる。診断は比較的難しくないが多様な臨床亜型があり)、中でもPSP-Predominant Parkinsonism(PSP-P)とパーキンソン病(PDは鑑別が困難な場合がある

表.PSPの臨床病型分類

 αシヌクレインが病態に関与するPDと異なり、PSPは異常なリン酸化タウ蛋白質が関与するタウオパチーである。病理学的には、脳内の神経細胞やグリア細胞内に特徴的なリン酸化タウの蓄積を認める。

 PSPには特異的な診断マーカーが存在しないため、診断は主に臨床経過や神経学的所見に基づいて行われるが、画像検査も有用である。中でも脳MRI正中矢状断像で認められる中脳被蓋の萎縮はハミングバードサイン(またはペンギンシルエットサイン)として知られ、PSPを示唆する代表的な所見である。しかし、この所見はPSP亜型(PSP-RS以外)では目立たないことも少なくなく、発症初期の診断を難しくしている。

 このような背景から、中脳被蓋の萎縮の有無を視覚的な読影のみに頼ることには限界があると考えられ、定量化を行い診断に有用な指標を開発する研究が以前から行われており、その分野では日本の貢献も大きい(J Neurol Sci 2003; 210: 57–60Neurology 2005; 64: 2050–2055など)。  

 今回紹介する論文(Radiology 2026; 319: e251394)の著者であるAndrea氏らはこれまで、脳幹(中脳、橋)だけでなく上小脳脚や中小脳脚も評価対象とするMR parkinsonism index(MRPI)を開発し(Radiology 2008; 246: 214-221)、その改良版であるMRPI 2.0(Parkinsonism Relat Disord 2018; 54: 3-8)の研究へと発展させてきた。

 しかし、先行研究には症例数が少ない、定量化が煩雑、PSP臨床亜型についての検討がほとんどないといった課題があった。今回の論文は、これらの課題解決を目的に、簡便かつ高精度にPSPと非PSPのPD関連疾患を弁別する新たな測定法dual-line midbrain PSP index(DMPI)の有用性を多数例で検証した研究である。

【監修】鈴木 重明(すずき しげあき)

東京都立神経病院脳神経内科、副院長

1968年東京生まれ。慶應義塾高校から慶應義塾大学医学部に進学し、1993年卒業。ニューヨーク医科大学留学、慶應義塾大学准教授(内科学・神経)を経て、2025年4月より現職。重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン(日本神経学会)、がん免疫療法ガイドライン(日本臨床腫瘍学会)、スタチン不耐に関する診療指針(日本動脈硬化学会)の作成メンバー。都立神経病院では自己免疫ラボを立ち上げ、重症筋無力症、炎症性筋疾患、免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象など自己免疫疾患の臨床研究を展開中。

鈴木重明

【執筆】齊藤 勇二(さいとう ゆうじ)

東京都立神経病院脳神経内科部長

埼玉県立川越高校卒業後、2003年に長崎大学医学部卒業。長崎大学病院や長崎市立市民病院で初期研修後、国立精神・神経センター武蔵病院(現国立精神・医療研究センター病院)の故村田美穂先生の下で脳神経内科の専門研修を開始。パーキンソン病や脊髄小脳変性症、多発性硬化症、筋疾患、プリオン病などの難病医療の基礎を学ぶ。総合病院国保旭中央病院(千葉県)に移り、脳卒中や神経感染症をはじめとした神経救急疾患の研鑽を積む。神経疾患の病態研究の重要性を感じ、国立精神・神経センター神経研究所で脊髄小脳変性症などのモデル動物を用いた病態研究に従事。基礎と臨床をつなげるphysician scientistを目指し、2015年から国立精神・神経医療研究センター病院脳神経内科で臨床・研究・教育に従事。2022年から東京都立神経病院で脳神経内科医長、パーキンソン病・運動障害疾患センター長(併任)を経て、2026年から現職。分子生物学や薬理学、病理学といった基礎的な観点から神経疾患の病態を洞察する研究を進めるとともに、患者1人1人に寄り添いながら、問診・診察・検査を基にした治療を提供する泥臭い医療者を目指している。

齊藤 勇二
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