ドクターズアイ 鈴木重明(脳神経内科)

全身型重症筋無力症にCAR-T療法は有効か

BCMAを標的とする新たな治療アプローチ

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研究の背景①:血液がんから自己免疫疾患へ、CAR-T療法を応用

 キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T)療法は、患者本人から採取したT細胞に、体外でキメラ抗原受容体(CAR)遺伝子を導入し、再び体内に戻す治療法である。遺伝子導入によって作製されたCAR-Tは、特定の抗原を認識して強力に攻撃する。現在、再発・難治性の血液がん(B細胞性腫瘍)のみで保険適応となっているが、病原性B細胞を標的とすることで、自己免疫疾患に対する有効性も期待される。昨今、重症筋無力症(MG)をはじめ、さまざまな疾患を対象に臨床試験が進められており、治療効果が示されている(Nat Rev Drug Discov 2026; 25: 290-309)。

研究の背景②:MGではB細胞系が重要な役割を担う

 MGは、国内の患者数が約3万人と推定される最も頻度の高い神経免疫疾患である。近年治療の進歩が著しく、多くの分子標的治療薬が適応となって治療成績の向上につながったが、病勢コントロールが難しい症例も一定数存在する。

 MGの病態にはB細胞系が重要な役割を担っており、形質細胞が産生・分泌する自己抗体を介して神経筋接合部の刺激伝達が障害され、眼筋症状をはじめ全身の筋力低下が生じる。病原性抗体として抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体と抗筋特異的チロシンキナーゼ(MuSK)抗体が知られるが、抗体陰性例も存在し、病態機序や臨床像は多様である。

 今回紹介する研究では、全身型MG(gMG)を対象にB細胞成熟抗原(BCMA)を標的とするCAR-Tを作製・投与し、BCMAを発現する形質芽細胞や形質細胞を除去することによる有効性と安全性を検討した(Nat Med 2026; 32: 1131-1141)。

【監修】鈴木 重明(すずき しげあき)

東京都立神経病院脳神経内科、副院長

1968年東京生まれ。慶應義塾高校から慶應義塾大学医学部に進学し、1993年卒業。ニューヨーク医科大学留学、慶應義塾大学准教授(内科学・神経)を経て、2025年4月より現職。重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン(日本神経学会)、がん免疫療法ガイドライン(日本臨床腫瘍学会)、スタチン不耐に関する診療指針(日本動脈硬化学会)の作成メンバー。都立神経病院では自己免疫ラボを立ち上げ、重症筋無力症、炎症性筋疾患、免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象など自己免疫疾患の臨床研究を展開中。

鈴木重明

【執筆】 羽尾 曉人(はお あきひと)

東京都立神経病院脳神経内科医長

東京大学病院脳神経内科で専門研修の後、同大学院博士課程で分子遺伝学的研究に従事。大脳型副腎白質ジストロフィー(ALD)のモデルマウス作製などに携わった。脳に炎症性脱髄を来す大脳型ALDの研究を通して、神経免疫疾患領域に興味を持ち、同大学院卒業後に三井記念病院脳神経内科を経て、2024年4月より現職。中枢神経系の炎症性脱髄性疾患に加え、重症筋無力症や免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象の研究に従事している。

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