JDDW 2024:参加者とともに消化器病領域の進歩をつくり上げる

日本消化器関連学会機構(Organization of JDDW) 理事長
関東中央病院 病院長

小池 和彦 氏

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

─JDDWの意義と今年の見どころについて教えてください。

 消化器病領域は、消化管全体に加え肝・胆・膵といった重要な臓器を診療対象とし、外科系を含めた多様なサブスペシャリティ領域の医師が集まる分野です。5学会が一堂に会するJDDWは、幅広く奥深い消化器病領域を縦・横断的に議論する貴重な場といえます。

 近年の消化器病領域では、デジタルトランスフォーメーション(DX)が重要な流れになっており、人工知能(AI)の活用が盛んに論じられています。また臓器に目を向けると、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)がMASH(NASHの新名称)へと変更され注目が集まっていますし、炎症性腸疾患(IBD)の治療も活気があるテーマです。

 JDDWの目的の1つは学会の国際化ですが、米国肝臓学会と共催するStrategic International Sessionでは、NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)から代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)へのシフトについて国際的な議論が聞けます。各学会主導のプログラムでも興味深い内容が並びますが、JDDWの魅力といえば統合プログラムです。その1つでは、高齢者の消化器がん問題の解決手段として関心が高まる内視鏡低侵襲治療を取り上げます。

 第32回日本消化器関連学会週間(JDDW 2024)では、こうした重要なテーマについて多くの参加者と意見を交わし、消化器病領域のいっそうの進歩を目指します。

─この数年で社会状況は大きく変わりました。JDDWにはどのような変化がありましたか。

 新型コロナウイルス感染症の流行でJDDWの開催は苦難を強いられましたが、一方でコロナ禍での工夫や経験は学会運営に効率化をもたらしました。現地開催とウェブ配信を併用するハイブリッド方式もコロナ禍で生まれた方法ですが、さまざまな事情で現地に来場できない人が参加できるようになるなど、ポストコロナとなる現在にも残る有益な変化です。今後もハイブリッド方式での開催は継続すべきだと強く考えています。

 また、女性の活躍においても良い変化が現れています。これまでJDDWは女性活躍の支援策の一環として、各学会の女性評議員を増やしてきました。現在、その中から役員が選出され始めており、まだ1割程度と少ない状況ですが、徐々に女性役員の割合は増えています。JDDW理事長に女性が就く日も遠くない気がします。

―消化器病領域はAIの医療活用が最も進む分野の1つになっています。

 消化器病領域の潮流を語る上で外せないのが、DXを背景に発展を遂げているAI活用です。特に内視鏡分野では生成AIを用いた診断に診療報酬加算が認められるなど、技術や状況が飛躍的に前進しています。また、肝臓領域では生成AIによる病理解析が進み、炎症や線維化以外の特定の組織所見が肝がんのリスク因子として同定・解明されつつあります。

 また、AIの医療活用は新たな人材の活躍にもつながっています。デジタル分野で優れた能力を持つ医学生や若い医師が、AI開発を通じて医療に大きく貢献できるようになりました。JDDWとしても、若い世代のAI分野での活躍を支援していきたいと考えています。今年の第24回医療セミナーでは「生成AIで変わる診療・研究・教育」をテーマに掲げ、進歩著しいAIと医療の現状を見つめます。

―最後に、参加者に向けてメッセージをお願いします。

 JDDWの参加者は年々増加し、昨年(2023年)は2万5,000人近い参加登録がありました。現地参加も回復傾向にあるので、JDDW 2024は多くの方がご来場しやすいよう、利便性と規模に鑑み神戸の地で開催いたします。ぜひ魅力ある神戸の街もお楽しみください。

 学術集会の醍醐味は発表者と聴衆の間で交わされる議論です。発表がない方もぜひ現地に足を運んでいただき、質疑応答で会場を盛り上げてください。発表は現地で行うことを原則としますが、ハイブリッド方式併用ですので、現地参加が難しい場合にはライブ配信やオンデマンド視聴でご参加いただけます。皆様とともに消化器病領域の進歩をつくり上げたいと考えていますので、多数のご参加をお待ちしております。

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