JDDW 2026:肝移植・肝がん・MASHの新たな論点に迫る
第30回日本肝臓学会大会 会長/
京都大学 肝胆膵・移植外科 教授
波多野 悦朗
※氏名は敬称略

この10~20年の間に、肝疾患を取り巻く状況は大きく変化しました。ウイルス性肝炎の克服が視野に入れられるようになった一方で、代謝性肝疾患や脂肪性肝疾患、アルコール関連肝障害が増加しています。中でもMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)は、肝硬変や肝がんへ進展し得る重要な病態です。新たな薬物療法の登場もあり、MASHの診断、リスクの層別化、治療戦略は、「肝臓病を治すために叡智結集」をテーマに掲げる今回の日本肝臓学会大会において、主要なトピックになると考えています。
近年、薬物療法をはじめ医療費の高額化が進んでおり、特別講演「経済なき道徳は寝言である」では、医療の持続可能性の確保という、避けては通れない課題に向き合います。医療者にとって耳の痛い指摘も含まれるかもしれませんが、医療経済の視点から今後の診療のあり方を考える重要な機会になると期待しています。
肝移植も重要なテーマです。海外から肝移植の基礎研究と臨床を代表する研究者を招き、虚血再灌流障害といった基礎的課題や、肝がんに対する肝移植の適応に関する最新の知見を共有します。シンポジウム3「これからの肝移植の位置づけ」やワークショップ8「肝移植診療への参画」では、移植適応の評価や移植前後の診療において、消化器内科や肝臓内科の医師がどのように関与すべきかについて議論します。
肝がん診療は、背景となる肝疾患や医療環境の違いから、欧米とアジアで治療戦略が異なります。Strategic International Session 1 「JSH-AASLD joint symposium:肝癌マネジメントの変遷と新たな展開:East vs. West」は、欧米とアジアの特徴を理解し、考え方や技術を相互に学ぶ場になると考えています。また、肝がん薬物療法におけるアンメットニーズや、肝細胞がんに対する集学的治療を扱うセッションでは、治療成績の向上を目指し、急速に進歩する薬物療法と、肝切除、局所療法、放射線治療、肝移植などとの組み合わせについて議論します。
超高齢社会において、低侵襲治療の重要性は増していますが、全ての患者にとって真に低侵襲であるとは限りません。「消化器疾患に対する低侵襲治療の進化と功罪」では、短期成績だけでなく、根治性、長期予後、合併症、医療資源への影響も含め、低侵襲治療の適応範囲を多角的に検討します。
肝疾患の診療には、基礎・内科・外科にわたる横断的な視点が不可欠であり、そのような日常診療に役立つ知見が得られることがJDDWの大きな意義です。現地では聴講だけにとどまらず、議論の当事者として積極的に加わり、オンラインでは実臨床での課題や自分の研究テーマに関連するセッションで集中的に学ぶなど、それぞれの特性を生かして参加してほしいと思います。ぜひ、明日からの診療や研究に還元できる学びを持ち帰っていただけたら幸いです。
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